読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

2016/04/26 なにかしらの幸福な体験

日記

 先週の中頃からずっと、今やらなくてはいけないいちばん大事な課題とは別に、お金のことを考えていた。
 
 その月々に必要なパンや牛乳やコーヒー豆や、生理用品だとかの必需品を買う分にはとくべつ困ることはなかった。ただ、そういったものとは別に、少なくとも十数万円ほどのお金を用意しなくてはならなかった。それは現時点で抱えている負債だとかではなくて、これから間違いなく必要になるであろうというようなお金だった。
 もともと極度に散財するたちではなかったし、現時点でも出費を抑えるために映画や喫茶店にもほとんど行っていないくらいだったから、もしアルバイトかなにかでも始めればそれほど貯めるのがまったく不可能というわけでもなかった。しかし残念なことに、毎月数万円を稼いで好きに使いつつ、1,2万円をせっせと貯金して来年の春頃までに楽しく予定額を貯めよう、なんてことが出来るほど時間の余裕もなかった。もし、ただ私が平和な趣味のため、スクーターだとか、コンピュータの自作パーツを買うためだとかということのためにお金を用意したい、というのであれば無意味に悩む必要もなかった。そのお金は、遅くとも10月いっぱいまでに用意する必要があった。別に、キャプラの「素晴らしき哉、人生!」だとか、デ・シーカの「自転車泥棒」ほど逼迫した状況でないにしても、この半年ほどの間にそれだけのお金を稼ぐというのは、私にとってはほんとうに難しいことだった。

 半年ならまだ雇ってくれるのではないか、と思って上旬に近所の店のアルバイトに応募をして、面接などもしたのだけれど、残念ながら雇ってはくれなかった。店の雰囲気や面接をしてくれた若い店長さんはとてもいい感じで、面接の時の受け答えはかなりうまくやったし、実際アルバイト募集の際の注意事項であるとか、細かくいろいろ説明もしてくれたのだけれど、やはり勤務期間が半年ほどでは扱いにくいな、という話だった。あとで姉さんにその話をすると
「長く働けないなんて、わざわざ書いたりしなければ良かったのに。なにも考えずに『はい。もちろん出来ます、やる気はあります』ってそれだけ言って、雇われてからあれこれ口を変えるくらいでいいのよ、アルバイトなんだから」と、笑いながら言われた。
まだまだ自分は全然外での身の振る舞い方を知らないのだなと改めて思って、その日の夜、寝る前に不意に笑いがこみ上げた。
 面接に不合格だったと知ったときは存外落ち着いていて、とりたててショックということもなかった。ただ、もし私の代わりに雇った人のできが悪くて、ほんのすこしでも「多少なり働く期間が短くとも、あっちの子を雇っておけばよかったかもしれないな」なんて考えてくれたら良いな、と、そう思ったくらいだった。

 今は短期でのアルバイトを探すだとか、やや期限を遅らせる覚悟で他のバイトにも応募をしてみるとか、そういうことは出来うる限り頭の外に置いている。先ずは目の前のことを着実にこなすこと、今よりもっといろんな事を知ることだけを考えている。


 この前、YouTubeウィルソン・ピケットの「ランド・オブ・ア・サウザンド・ダンス」のライブ映像を観た。どういう類のコンサートなのかは分からないけれど、観客は全員黒人で、野外広場に大勢の黒人がひしめき合いながら踊っていた。とても格好よかった。熱唱しているウィルソン・ピケットも、中盤の即興のテナー・サックスも、終盤に興奮のあまりステージに上って踊り出す少年も。
 この曲が入っているアルバムが欲しい……お金が欲しいと改めて思った。