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2015/11/24 まったく不可思議なほどに彼によく似た

 昨夜、横になったのは5時過ぎで、はっきりと眼が冷めたのは午後に入ってから1時間ほど経った頃だった。
 この数日の間天気が悪く、ずっと曇りか雨の日が続いていたけれども、この日はよく晴れていた。布団にくるまったまま窓の方を見ると、本当に眩しくて、胸のすくような陽の光が外から差し込んでいた。

 数十分ほどの間、意味もなく音楽プレイヤーで音楽を聴いたり、数十秒間目をぎゅっと閉じて、開いて、それからまた閉じてということを繰り返したりしていた。ようやく頭がはっきりしてきて、朝食のこととか、それが済んだら何をするかだとか考えられるようになったところで適当に音楽を流しながら布団を片付けた。流れたのはホール・アンド・オーツだった。

 ある程度頭がはっきりしてもまだあれこれ身体を動かしてなにかをするという気にはならなかったので、パソコンを起動して、適当にネットに流れている記事を漁った。極右系大統領候補が水責めの拷問を復活させるべきだと発言しているとか、横領だかなんだかをやった市議会議員のこととか、自称社会派ネット文筆家だとかの記事がなんとなく目に入ったけれども、ページは開かずにそのままマウスホイールを転がし続けた。20分ほどの間、他愛無い記事を読んで過ごし、朝食を作る気になったので部屋を出た。

 朝食は砂糖の入っていないコーンフレークで、牛乳をたっぷり注いで食べた。それがなくなるともう一杯おかわりをした。コーンフレークの味気なさのせいか、主菜のない侘びしさのせいか、二杯目を食べ終わってもまだなんとなく物足りなかったけれど、どうせ何時間かしたら遅い昼食を取るんだから、と考えてそれで終わりにした。器を片付けると今度はポットに水を注ぎ、それを火にかけ、沸騰するまでの間に人から貰ったコーヒー豆を専用のさじで山盛り2杯分、汚れた手挽きミルで挽いた。それが終わったところでお湯も沸騰したので、それを別のポットに移し、古臭い煉瓦色のドリッパーでコーヒーを300ミリリットル分淹れた。

 コーヒー入ったサーバーを机のある部屋に持って行き、それを数日間洗わずに使い続けてやや茶色くなっているカップにサーバーに入っているコーヒーの半分を注いだ。そして椅子に座り、舌を火傷しないように気をつけながら二口飲むと、先週から読み始めたテキストの92ページ目を開いて読み始めた。2ページか、3ページ分まとまった分を読み終わるごとに4,5年前に途中まで書いたきり放置していたノートに、太い蛍光ペンで大雑把なまとめと、気になった部分のメモを書いて、それからまた数ページめくった。
 ノートにあれこれ書くのに夢中になっている内にコーヒーは大分冷めてきてしまっていて、サーバーに残った残りをカップに注ぐ頃にはもうほとんど冷たくなっていて、飲んでも美味しくなかった。これは豆が苦味の強いものだったこともあるし、私の淹れ方が下手くそだったせいでもあった。何かしらの甘味でごまかしたかったけれど、砂糖を淹れても溶けないであろうことは明らかだったので、棚からビスケットを出して、それを口に含みながら少しずつ残りを飲みきった。なんとなくここで静かすぎるのが気にかかったので、再びパソコンを起動して、適当に音楽を探して、たまたま目に入ったアシッド・ジャズのベスト盤を流した。それから、また少しずつテキストをめくって、ノートに文章を書く、ということを繰り返した。

 徐々に頭も、目も疲れてきて、これ以上だらだら続けても大した成果は見込めないだろうというところで止めた。時間はあと5分で17時を回る、というところだった。
 冷凍庫から冷凍ピザを出して、それをレンジで暖め、サイダーを大きめのコップに半分まで注いで、残りは水で薄めた。なんとなくこれだけでは足りないな、と思ったので、更に冷蔵庫から腐り始めたばかりのバナナと190ml入りのジンジャー・エールを取り出して、部屋に持って行った。

 なにか映画でも見たい気分だったので、一昨日にレンタルビデオショップで借りてきた青春映画の入ったカバンを探したけれども、見つからなかった。あまり重苦しい映画を観る気分ではなかったけれど、今年の初めに買ったまま放ったらかしにしていた映画DVDを棚から引っ張りだして封を開け、パソコンを使って観はじめた。
 映画は、一見理性的に思われた二組の大学教授の夫婦が酒を飲みながら話し合うにつれ、水面下に根ざしていた夫婦間の熾烈な確執が浮き彫りになっていく……という話で、30分を過ぎる頃には食後の眠気と映画の中の胸の悪くなるような罵倒の応酬ですっかり参ってしまった。それでももう30分ほどの間は、聞き取れた英語のフレーズをその辺りにあったルーズリーフに書き取ったり、メモをとったりしながら見ていたけれども、これ以上見続けていると胸だけでなく胃腸も悪くしてしまいそうだったので、トイレに行った後、カーペットの敷かれた部屋で布団にくるまり横になった。

 それから目が覚めたのは40分ほど経ったところで、起きた後もしばらくぼんやりしたまま横になっていた。
 部屋に戻っても続きを観る気にはなれなかったので、また適当に音楽を探した。今度見つけたのはジャンゴ・ラインハルトのベスト盤だった。それを聴きながら、知り合いのメールを確認したり、SNSのページを開いて、知り合いの文章をざっと眺めたりしていた。その後はそのまま何をするわけでもなく、適当にパソコンをいじっていた。途中で聞き覚えのあるメロディが流れてきた。ジャンゴ・ラインハルトのことを知ってからまた数ヶ月も経っていないというのにどうしたわけだろう、と思いながらしばらく聴いていると、それがジョージア・オン・マイ・マインドであることに気づいた。私がこれまでに聴いたことのあるのはルイ・アームストロングと、レイ・チャールズの一番有名な、豪勢なあれだけだったから、このなんとも素朴な、カントリーのようなジョージア・オン・マイ・マインドは新鮮だった。彼の音楽はカントリーではなく、ジプシー・スウィングとか、ロマ音楽とか言うらしかったけれども、今の私には違いがよくわからなかった。

 モニターと顔を合わせ続けるのにも飽きてきたし、時刻もすっかり夜になっていたので、熱い風呂に浸かって身体を暖め、身体を洗った。
 風呂を出る頃には夕食のクリームシチューが出来上がっていたので、手早く適当に髪の毛を乾かしたところで、食パンと一緒にそれを食べた。それから少し家族と喋って、それからその日2度目のコーヒーを淹れた。それをまた部屋に持って行き、砂糖を2つ入れて飲みながら90分ほどキーボードを叩いて日記を書いた。

 それが終わったところで、今年の夏に名画座で観た、今年観た新作の中でも気に入っている映画のサントラの中の何曲かを聴いた。
 飲んだコーヒーが薄かったおかげかすぐに眠気が来た。歯磨きをし、少しだけドライヤーで乾かし直したところで、さっきのサントラに入っていた、ミニー・リパートンのレ・フルールをもう一度聴いて、布団を敷き、眠った。