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下北沢 カフェ「トロワ・シャンブル」

 新宿御苑を出てからもまだ映画の時間まで余裕があったのですけれど、二時間弱歩き通しで既に足が疲れていたので、そのまま下北沢へ向かうことにしました。新宿駅に着いてから十数分迷わされた後、なんとか下り始発列車の席にありつき、それからまた十数分ほどの間、一年ぶりの小田急線に懐かしい気持ちにさせられながら、電車に揺られていました。

 下北沢に来るのは、4月の「ほしのこえ」の再上映以来2度目で、今回はトリウッドの場所も把握しているので、取り立てて面倒もなく辿り着くことができました。それからしばらく喫茶店を探し歩いて、17時を周ったところで、トリウッドのある小道から人通りの多い通りを挟んだ逆側の小道にある、トロワ・シャンブルという喫茶店に入りました。

 中に入ってすぐ若い男性の店員さんにお一人ですかと聞かれ、そうですと答えると、ではカウンターのお好きな席にどうぞと言われ、そのままカウンターの席に。店内は意外にも若い人たちで混み合っていて、控えめなBGMを掻き消してしまうほど、喋り声で満たされていました。入口のいかにも個人経営という感じの手書きメニューやらを見た限りではそれほど人の多そうな雰囲気は無かったのですけれどね。

 内装はほとんどダークブラウン一色で、キッチンの後ろの棚には高そうなカップがずらりと並んでいました。照明はそれほど明るさのきつくない小さなものがところどころにおいてあるような具合で、私がこれまでに行った喫茶店のなかで一番暗い喫茶店でした(後で写真を検索してみると意外としっかり光量があったので、時間帯のせいだったのかも)

 コーヒーは550円のブレンドが2種に、アイス、デミタス、ウィンナーコーヒー、カフェオレとストレート各種に紅茶も少し揃えられていました。ケーキはコーヒーとセットで850円、2杯目以降は一杯250円になるようでした。
 ニレブレンドとカゼブレンドのどちらにしようか少し迷ったのち、ニレブレンドを注文しました。。これまで来た喫茶店と違いミルクと砂糖を先に使うか聞いてくれたので、ついでにミルクは要らないと伝えました。

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(ニレブレンド、550円)

出てくるのがかなり早かったので、淹れおきかな、と思います。味は苦味が強く、かなり濃い目。深めというよりは単純に濃く淹れたというような風味だったので、淹れおきしたのを煮立て直したのかもしれません。店主らしき方が作業をしている様子は見られず、若い店員さんがせっせと飲み物を用意しては接客していたので、まあこんなものかな、なんて思いつつ、カメラバックの隙間に詰め込んだ文庫本を取り出して、繰り始めることにしました。

この日読んでいたのは新井素子の「ひとめあなたに……」で、昨日から読み始めたものだったのですけれど、特有の軽口な文体のせいかどんどんページが進んでしまって、もう残り5,60ページほどになっていました。隕石衝突による人類滅亡まであと一週間に迫った現代の日本で、女子大生の主人公が狂気に満たされていく人びとの中を掻い潜って恋人に会いに行くという物語で、SFというよりはSF的設定を基板にしたヒューマンドラマと言った感じの趣です。個人的には描写を際立たせ過ぎていて鼻につくところもあったのですけれど、とても気に入ったキャラクターがひとりいて、その子の挿話のときだけは、なんだか少ししんみりしてしまいました。
 新井素子は去年の夏から代表作を漁り始めて、これで4冊目くらいです。今でも格別好きな作家というわけでもないのですけれど、それぞれの作品の登場人物たちの軽い調子だけどどこかに切実な感情を秘めているさまだとか、軽い文体が鼻につきながらも優れたストーリーテリングで読ませてしまうところだとか、どの作品でもひとつ、必ず刺さるところのある作家です。これを読み終わった後、「とり散らかしておりますが」という彼女のエッセイを読んだのですけれど、こちらもなかなかいい読み物でした。
 
 二十数分ほどで読み終わり、残りのコーヒーを啜りながら店内をちらちら見回したり、2つ隣のお客さんの様子を見ていたりしていたのですけれど、せっかく普段そう来ない下北沢に来たのだから適当に遊んでおこうと思い、外に出ることにしました。