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2015/07/07 すごくロマンティックだわ、

日記 映画

 先月の末に三本立てを観て来たばかりなのですが、一週空けて、また早稲田松竹へ二本立てを観に行ってきました。
 今日のお目当ては「インヒアレントヴァイス」「トゥルー・ロマンス」の二本で、これは以前から観たいと思っていたものの、見逃してしまった二本でした。

 今月から来月の初めまではずっと予定が立て込んでいて、兎にも角にも時間が足りないという状態だったので、二回目の上映を観に行く予定だったところを少し早めて、一番最初の回から入ることにしました。
 相変わらず余裕を持って行動するだけの計画もなく、行き当たりばったりで出掛け、駆け足で着いた頃にはいつも通り上映まで5分もない、という時間になっていました。あと10分でも余裕を持っていれば、近くのコンビニでコーヒーを買って目を覚ましながら観ることだって出来たのに、我ながらバカみたいですね。

 でも、どうやらバカだったのは私だけではなく、映画の方もだったようでした。一本目の「インヒアレント・ヴァイス」は、麻薬中毒の探偵が玉の輿に乗った元恋人からの依頼が切っ掛けで、不動産王を巡る巨大な事件にかかわっていく、という話で、映像も70年代の匂いをぷんぷん醸しつつも、深刻で、それでいて冗談みたいな映像が続いていきます。主演のホアキン・フェニックスはもちろんのこと、刑事役のジョシュ・ブローリンがこれまたバカみたいに良くて、展開の複雑さについていけなかった私の一番の見どころは、この二人の掛け合いと音楽でした。とくにジョシュ・ブローリンのキャラクターは、まさに主役を喰ってしまわんばかりの濃さで、チョコバナナを舐め回したり、坂本九SukiyakiをBGMに片言の日本語を話したりと、とにかく彼の演技を観るだけでもひと月分くらいはにやにやしていられそうでした。……しかしながら、こんなシーンが実際にピンチョンの原作でもあるのでしょうかね?

 映画全体でははっきり言って理解不足もあってこれだ、と言えるところはないですし、P・T・アンダーソンの映画はどれも観客を突っぱねつつも置いてけぼりにしない絶妙さ、映像の小気味よさこそがカギだと思うので、私はフェニックスとブローリンの姿を目に焼き付けられただけでも満足でした。

 そう言えば、私はこの映画の予告編をとても気に入っていて、観ようか観まいか迷っているうちに終わってしまったときは、ショックを和らげるために毎日のようにこの予告編をインターネットで見ていました。それから、この予告編の後半で流れるサム・クックの「Wonderful World」も大好きで、これが聴けるなら、輸入盤のサントラを買うのもいいかも知れない、と思ったほどでした(残念ながらサントラには歌曲は入っていなかったのですが)

 二本目の「トゥルー・ロマンス」はインヒアレント・ヴァイスとは違い愚直で一本筋の通った映画で、アメリカン・ニューシネマ的な犯罪逃亡劇をベースにした作品でした。最初にアジアン・アクションムービーの上映で出会った胸の大きなブロンド美女と素敵な夜を過ごす……なんていうタランティーノのおたくくさい妄想丸出しな展開から始まったときは、なんてバカみたいな映画なんだろう……と思ったのですが、エルヴィスからの啓示を受けてポン引きと対面しに行くシーンから、楽天的なドタバタ逃亡劇が少しずつ色を変えてはじめてきて、終盤に近づくにつれて、バカみたいな話が切実なラブ・ロマンスへと変貌していきます。また、パルプフィクション的な会話劇や、やたら豪華な配役(脇役にゲイリー・オールドマンデニス・ホッパークリストファー・ウォーケンブラッド・ピット……)と、前情報なしにタランティーノ監督作品だと言われたら信じてしまうだろうというくらいタランティーノ色の強い作品でした。
 それから、映画のオープニングからエンディングまで幾度となく流れる背景音楽があり、それがドラムスと木琴(あとで調べたら木琴ではなくマリンバだとか)を基調とした「You're So Cool」という曲なのですが……これが、すごくいいのです。序盤までに流れるのを聴いている限りでは、あまりに綺麗な音で拍子抜けしそうになるのですが、物語が終盤に進むにつれて、この曲から主人公のクラレンスとアラバマの心境がこれでもかというほど伝わってくるのです。終盤、物語に決着がついたところでこの曲が流れだしたときは、思わず喉を鳴らしてしまったほどでした。
ラストシーンは、アメリカンニューシネマ的な直前までの展開に反してハッピーエンドで終わるのですが、これは監督のトニー・スコットタランティーノの草稿を改変したためだとか。これは実際に観ている時私も違和感を覚えたところで、ハッピーエンド自体にそれほど不満はなかったのですが、これが「俺たちに明日はない」のような最期を迎え、二人の姿がバンと映しだされたところで静かにあの曲が流れていたらもっと私好みだったのに、なんて考えていました。アメリカンニューシネマ的ではないとは言ってもタクシードライバーでも観られるエンディングですし、個人的にはあれはあれでありだと思っているのですけれどね。


 今回観た作品は70年代風味の新作に90年代のアクション映画と普段あまり手を伸ばさない領域だったのですが、どちらもとてもいい映画でした。見終えた後はなにも考えずに時間を潰して、なにがどうしようもないものを食べたい気分に駆られたので、ゲームセンターで1時間ほど適当にゲームをした後、一番安いハンバーガーチェーンで、一番目と二番目に安いハンバーガーと萎びたポテトを買って、ずっとむしゃむしゃやりながら帰路に就きました。