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映画「アンタッチャブル(The Untouchables)」

映画

映画「アンタッチャブル(The Untochables)」

監督: ブライアン・デ・パルマ
出演: ショーン・コネリー, ケヴィン・コスナー, ロバート・デ・ニーロ

禁酒法施行間もない1930年代のアメリカ合衆国・シカゴを舞台に、大悪党アル・カポネを検挙すべく立ち上がった財務官率いる捜査チーム・アンタッチャブルの、マフィアたちとの攻防を描いたギャング映画。

この映画を見ているうちで先ず魅力的に映るのは、やはり各キャストの優れた縁起だろう。
俳優たちの演技でもとりわけ際立っているのはショーン・コネリーロバート・デ・ニーロ。この二人のうちでも、ロバート・デ・ニーロ演じるアル・カポネの姿や立ち振る舞いは非常に異端的で、他の映画作品でのデ・ニーロにもあまり見られていない。豊富な頭髪を蓄え、筋肉質でありながらも高い身長がそれを際立たせすぎない、ほどよいダンディズムを兼ね備えたそれまでのロバート・デ・ニーロの姿はこの映画の中では一片ほども見られない。
前髪は剃られていておでこが広く、禿頭で、顔もかなり丸みを帯びている。身体もふっくらとしており、口調もその丸さと素っ頓狂な顔に負けない独特の調子が込められた、どこか道化めいた話し方と立ち振る舞いを持ち合わせている。(調べたところによれば、今作で演ずるにあたり、顔を丸く太らせ、頭髪を抜いたり剃ったりした、とのこと)
主人公達アンタッチャブルと相対する大悪党として登場しているものの、徹底して自らの手をおおっぴらに汚そうとしない彼の出演どころはそれほど多くない。しかしながら、その印象的な役回りから、アンタッチャブルたちにも負けない圧倒的な存在感を放っている。
アンタッチャブルの中でも重要な役割、精神的支柱を担うショーン・コネリーの演技も好印象で、我の強そうな太く濃い眉毛と真摯な眼、かっちりとした体格はその役に恥じない落ち着きと情熱とを孕んでいる。
彼の印象的な発言のいくつもが、アンタッチャブルにとって、またこのギャング・ムービーに於いても大切な意味を持っており、そうした意味から言っても、彼の演技は素晴らしいものだった。

 それから、こうした役者たちの素晴らしい演技をより際立たせているのが、秀逸な演出と構成だ。
この映画が持っている最大の課題として挙げられるのが「正義と悪(アンタッチャブルアル・カポネ)」という対照的な存在のぶつかりあいだが、こうした対比演出はこの課題のみならず、劇中のあらゆる場面に盛り込まれている。
その中でも際立っているのが、アル・カポネの脱税裁判においてキーパーソンとなる、アル・カポネの帳簿係の検挙シーン。迫りくる勝負の時間の直前に、主人公(ケヴィン・コスナー)が迫りくる時間の中で、赤ん坊のベビーカートを階段に上げてやる善意に満ちた静寂と、迫りくる帳簿係とガード・マフィアの存在を互いに上手く突き当てている。そうしてアンタッチャブルとマフィアの戦闘シーンへとつながっていくのだが、こちらでもそれらを多分に盛り込んだ演出が施され、ギャング映画作品群のなかでも芸術性の高い作品に仕上がっている。
この場面の他にこうした演出が見えるのはやはりラストにかけての検察対アル・カポネの裁判シーンであろう。常に目まぐるしく予測の入れ替わる攻防は、戦闘描写にも負けない迫力を放っており、言うまでもなく必見。


勧善懲悪的な王道ライクなシナリオ(とはいえ、各方に張り巡らされたシカゴの汚職社会や、それに対抗すべく残忍な手段をとらざるを得ないアンタッチャブルの苦悩や激情は、一概に勧善懲悪だと言ってしまえないものがあるが)と役者たちの好演、それから秀逸な演出構成、どれをとっても素晴らしく、一つくらい文句をつけようと思っても、なかなか上手い屁理屈が思い浮かばない。
これほど二時間という時間が短く感じられた映画は非常に少なく、様々な優れた面に感嘆させられる一方で、辺にこねくりまわされていない、純粋に楽しめる映画の一つとして自身を持って挙げられるだろう。