読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

アーネスト・ヘミングウェイ「老人と海」(新潮文庫刊)

2014.03.16 アーネスト・ヘミングウェイ老人と海

 キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく……。徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。(新潮文庫あらすじより引用)



 徹底した行動描写と、”海”という圧倒的存在の描き出し方が独特、それでいて衒いがない。その簡潔な文章表現の中からも「老人と海」の中に生きる漁夫サンチャゴの姿は咽るほどに強い生気が溢れており、読者の胸をずん、ずんと打つ。……数ヶ月もの間の不漁をものともせず小舟と共に海へと飛び込んでいく老漁夫の姿、幾日にも渡る大魚との激しい格闘、憔悴と決心に満ちたサメたちとの最終決戦。自然が持つ途方もない力と精神に挑むサンチャゴの力強い姿は、感涙を誘う。

短編執筆が主になった後期から末期にかけての作品群の中でも目映い光を放つ作品。アーネスト・ヘミングウェイの数ある作品の中でも優れているのはもちろん、米文学に於いても極めて重要な作品となっている。


85. あれ一匹で、ずいぶん大勢の人間が腹を肥やせるものなあ、とかれは思う。けれど、その人間たちに、あいつを食う値打ちがあるだろか? あるものか。もちろん、そんな値打ちはありゃしない。あの堂々としたふるまい、あの威厳、あいつを食う値打ちのある人間なんて、ひとりだっているものか。

120. たぶん罪なんだろう、魚を殺すってことは。たとえ自分が食うためであり、多くの人に食わせるためにやったとしても、罪は罪なんだろうな。でも、そなれば、なんだって罪だ。罪なんてこと、考えちゃいけない。第一、もう手遅れだし、そいうことを考えるために、お金を頂戴している人間も沢山いることだ。罪のことは、そういう連中に考えてもらったらいい。

121. お前は誇りをもってやつを殺したんだ。漁師だから殺したんじゃないか。お前は、やつが生きていたとき、いや、死んでからだって、それを愛していた。もしお前が愛しているなら、殺したって罪にはならないんだ。それとも、なおさら重い罪だろうか、それは?