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映画:東京ゴッドファーザーズ

映画

家出女子高生、ドラッグクイーン、自称競輪選手の親父のホームレス三人組を主人公として、ごみ捨て場に捨てられた名も無き子供の親を探して回るコメディアニメ映画。


先日感想文を書いた映画「パプリカ」の監督をされた今敏氏が同じく監督を手掛けた作品、と言う事で見るに至った。「パプリカ」は、物語の複雑さについては多少なりの文句を言いながらも、実のところは大のお気に入りで、ディスクの購入を考えたほど。

この東京ゴッドファーザーズは、以前観たパプリカの三年前に発表された作品。パプリカ以前製作の今作ではパプリカに観られたようなアニメ初心者でも分かるようなこれ!というようなアニメーションでの凄味はないが分かり易いコメディ色に、製作側独特の要素を盛り込んでおり、クセはあるが、非常に面白いものになっている。
先ず何よりも評価したいのは、一般的なアニメに見られるような輝かしさであるとか、爽やかさであるとか言った要素の一切を廃しながら、全く独自の世界観で、映画を作り上げてしまった事。前述のあらすじの通り、主人公は家出した女子高生、異性装を仕事にしていたおかま、自称元競輪選手の中年親父なんて花のないキャラクター。おまけにホームレスで、花どころか草木以下の、きのこみたいな設定。それでありながら、内容は暴力団の抗争に巻き込まれたり、といった旧時代の映画のような、きわめてベタなコメディで、妙な奥ゆかしさや複雑さがなく、素直にくすりと笑うことの出来る物語になっている。
また、げらげら笑い尽くすだけ、と言うような物語ではなく、時折受動者側に「えっ?」と思わせてしまうような悲劇めいた一面を見せてくる時があるのも非常に感心したどころで、時々に見せた悲劇も、単なるお涙頂戴の要素として片づけられるのではなく、その悲劇を転じさせて、更なるお笑いに、喜劇に変えてしまっているのがなんとも面白い。それから、表面的な物語だけでなく、奥深い部分までさり気なく伏線を張りながらきっちり回収して終わるのも素晴らしい。こういった部分で、突き抜けただけのコメディ映画と一線を画しているのも、一般的な評価が高い一因なのかもしれない。

現実世界(東京)を舞台として、子捨て、暴力団不法入国者、ホームレスと言った現実的な要素を扱っていることもあり、アニメーションではあるが、かなり現実志向になっている。声優も専門の声優ではなく俳優などが主人公たちの声をあてている。
俳優などの芸能人が声をあてている、というのは一部の例外を除き、大体今一つな場合が多いのだが、これはその例外だったらしい。実際にドラッグ・クイーンを職としたことのある俳優に元ドラッグクイーンのハナの声をあてさせたのは見事で、独特の生々しさがある。ホームレス女子高生のミユキは、女らしくない生意気な口ぶりや、気取らない冷めたアニメ的でない口調が非常に合っている。このキャスティングが監督によるものであるとかというようなことは知らないが、こう言った部分も非常に映画とマッチしていて、映画への没入感を高めた一要素として、個人的には評価したい。


世界観や登場人物たちこそ妙ちきりんで、あらゆる意味で異臭を放っているが、映画としての完成度は、物語、演出、アニメーション、声優どれをとっても素晴らしい。テイストとしては正直華やかさに欠け、一般的なアニメと同様に評価を下すことが出来ないのだが、それまでの美少女、ロボットというような正統は出ない独自の路線でのアニメーション映画としては、おそらく最高峰であると思う。
引き続き、今敏氏の作品を漁ってみようと思う。