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映画:雲のむこう、約束の場所

映画

雲のむこう、約束の場所
監督・脚本:新海誠

北海道と北海道以南に分断された、実際の歴史とは異なる未来に進んだ日本を舞台として、眠り続ける少女・沢渡佐由理と、主人公・藤沢浩紀、親友・白川拓也の恋愛、友情を描いたSFアニメーション映画。

秒速5センチメートルが非常に気に入ったために、監督(新海誠)つながりで観てみることにした。ただ、短絡的に同じ監督だから、というだけではなく、秒速5センチメートルの特典映像としてあった新海氏へのロングインタビューで、たびたび前作に当たるこの映画の名前を出されていたのも観ることにした一因の一つ。

後の代表作の一つとなる「秒速5センチメートル」は少年と少女の遠距離恋愛と肉体的、精神的成長の過程を描く、という現実志向なものだったが、前作にあたるこれでは、現実世界を基調としながらも、別の歴史を辿った日本、超科学的な正体不明の塔など、様々なSF要素が盛り込まれている。飽くまで基盤となるのは眠りから覚めなくなってしまった少女とその少女の眠りを覚まそうとする少年。

感想としては、「非常に見せられる作品ではあったがストーリーの説明不足から、少し消化不良な感があった」というのが一番。
藤沢浩紀ら三人が中学三年生の時から始まり、徐々に成長と現実とは異なる歴史の展開を描いていく感じは後の作品と同じで、重く時間の進行がのしかかってくるような感があって、非常に良かった。前作の時点から、学生の生活描写を爽やかに、美しく切り取るのが非常に巧みだな、と思った。他にも重苦しい場面を、切なさを残しながら描くのも非常に上手く、私が一番評価したいのはその点。
一番の不満はやはりストーリーの説明不足。当初これを私は「不可解な説明が多く、物語として練り切っていない」と評そうとしたのだが、これは私の件と違いだったらしい。私が映画を見た際には展開が早すぎたり、今一つ理解出来ず「細部の物語はあまり練っていないのではないか?」と思ったのだが、見終えたのち方々で調べてみると、想像していた以上にきっちり世界観設定も出来上がっており、「ああ、あれはそういう事だったのか」なんて今更ながらに納得させられたりした。恐らくこれは私の理解不足と、アニメーション故の尺不足によって起きた説明不足だと思われる。蝦夷とユニオンの分断、水面下で進む海上衝突、ユニオンの塔の破壊、ユニオンの塔が放つエネルギーとナルコレプシーを発症した沢渡佐由理の関係性、そしてユニオン側―連合側の衝突からメインとなる少年たちが約束し合った夢、といった一連の流れを100分程で完璧に説明しきり、且つ藤沢浩紀と沢渡佐由理の間に芽生えた感情を全面に押し出していくのはかなり困難で、実際問題説明しきれずに、不可解なままに物語は終わってしまっている。これらの物語の問題はノベライズなどで大分補完されているようなので、そちらの方に追々触れてみたいな、と思う。

その他の点については特に不満はなく、数々の賞を受賞している作品と言うだけあって、非常に魅力的な作品だと思った。強いて文句を言うなら、主人公の声に多少違和感があるかな、というくらい。

個人的には秒速5センチメートルの方が好みなので、興味を持っている方が居れば是非そちらを先に見て貰いたいのだけれども、こちらもなかなか捨てがたい。物語の本筋自体は恋愛になっているが、そのバックグラウンドとして作られた世界観も十分な押しになるもので、秒速5センチメートルにはない独自色を放つ作品として、色々な不満点をノベライズ等で補完したら改めて観てみたいものだ。