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映画:グリーンマイル

映画

グリーンマイル

原作:ステーィブン・キング
監督:フランク・ダラボン

生物の病気や怪我を癒す神的な能力を持った死刑囚の大男ジョン・コーフィ(マイケル・ダンカン)と、ポール・エッジコムら牢獄看守たち、他の死刑囚との関わりや一連の事件を描いた、ファンタジー映画。

とても有名な作品だ、という事で観るに至った。
ただ、私は映画について無知で、きわめて著名な俳優と知られていた(らしい)主演のトム・ハンクスさえよく知らなかった。おまけにホラー系の小説家についての知識も持って居ず、スティーブンキングの著作だという事もよく覚えておらず、事前にあらすじを知らないままに観る事となった。

感想として先ず第一に言えるのは、「決して悪い作品ではなく、寧ろよく出来た映画だが、自分が事前に想起していたものと今一つかみ合わず、どうにも好みとは言えない系統の映画だった」という事。
てっきり私は「ショーシャンクの空」のような、囚人間の関係であったり、囚人と看守の関係だったりを描いた映画だと思っていたのだが、実際にはそれらよりも「ファンタジー」の色が強く、私が期待していたものとは結構な差異があった。もちろんこれは事前に簡単なあらすじさえ把握していなかった私と、私の嗜好の問題で、映画についての文句ではない。ただ、私がファンタジーを好まない、というだけの話だ。

私がファンタジーを好まない、という事を踏まえて映画の良さを書かせてもらうと、この映画の魅力はファンタジー一辺倒ではなく、ファンタジー色を強めながらも、物語の引立てとして重要な位置づけにある場面場面をリアルに、生々しく描いている、と言う点。
特に、アーレン、デルまでの物語は凄まじく、且つ素晴らしい。「ジョン・コーフィなんて居なくても、彼らの一連の事件を現実志向に、生々しく描くだけで十分に面白い映画が出来る」と思ったほど。このグリーンマイルという物語が、単なる癒しの力を持ったジョン・コーフィの物語というだけなら恐らく、これほどまでに有名な小説や映画にはならなかっただろうと思う。それだけ死刑囚が監獄の生活を経ての電気椅子での処刑、と言う流れを強く意識し、こだわって描いている。
アーレンの死刑執行からドラクロア(デル)の死刑執行の間の衝撃は凄まじく、彼らの事を思いながら「この私があんなにも無残に死ぬ羽目になった時、死ぬ直前、なんて言えばいい?」なんて考えていた。このあたりは下手な情操教育用の教科書より人格形成に役立つな、なんてことも一緒に考えたり。

目玉となるジョン・コーフィを巡る一連の事件については、私がファンタジーをあまり好まない以上正統な評価は下せないのだが、決して悪いなんては思っていない。歪んだ精神の持ち主である死刑囚ウォートンと幼稚でだらしのない哀れなパーシーへの制裁や、所長ハルの妻メリンダの病を治すというのはジョン・コーフィなしでは感動を生むことが出来ないし、複数の事件を一本の線として繋げていくという物語も良かった。が、これはどうしても電気椅子の衝撃の前では、弱い。他にも前述のウォートンやパーシーの迫力ある気狂いじみた演技であったりと比べると、基本的に居りの中で縮こまっているだけだったり、ぼそぼそとひとりごちているだけの役は、大男であっても弱い。全体的に良く出来た映画で、評価されるのも頷けるだけの素晴らしい映画だが、映画をよく知らない無知の文句を一言言わせてもらうならば、ジョン・コーフィをもっと印象付けるような温かみのあるシーンであったり、刑務所内での生活をこれよりも更に生々しく、きつさのあるものにしてほしかった。涙を流すだけの路線であるよりもアレン、デルのような衝撃的なものとして罪なき死刑囚ジョン・コーフィを描いてほしかった。
何度も言うが、この映画は素晴らしく面白い。ファンタジー色の物語が苦手であっても十二分に満足できたし、本筋以外の要素も非常に優れている。ただちょっと、感想文にでしゃばって小言を書いただけ、それだけだ。

余談だが、二十分程度の小さな役で、「映画:二十日鼠と人間」の監督と主役を務めたゲイリー・シニーズが出演している。私は二十日鼠と人間を観て以降彼のファンで、彼がこの映画で、ジョージとは違う眼鏡の堅実そうな男性を演じているのを見た時、とても嬉しくなった。彼目当てという以外に理由もなく映画を見るのは愚行と言わざるを得ないが、彼が他に出演している映画で、著名な者が有れば観るのも悪くないだろう、と思う。