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映画:二十日鼠と人間

映画

二十日鼠と人間
原作:ジョン・スタインベック
監督:ゲイリー・シニーズ

恐慌期のアメリカを舞台として、自分だけの農場を持つことを夢見る二人の出稼ぎ労働者の物語。

感想としては、先ず第一に、原作小説の魅力の一つであったジョージとレニーの掛け合いをそのまま映画に持ち込んでいたのが良かったな、と思った。
「俺たちは、小さな家を買う―」と言った言葉から始まるあの掛け合いは、原作を読んだ人間なら思わずにんまりしたり、目頭が熱くなったりしてしまうだろうと思う。

短編小説という事もあり特にごっそり削ってしまった部分と言うのはなく、極めて原作重視の物語展開になっていた。これは私みたいな、頭の悪い原作至上主義の人間には非常に嬉しいところだった。雰囲気も私の考えていたレニーやジョージそのままで、世界観もまさにイメージしたものそのままだった。
一部撮影上の理由で設定が変更されていたり、登場人物が減っていたりする部分もあるが、物語面ではなく殆ど原作そのままで、これを見さえすれば「二十日鼠と人間」を十分に語る事が出来ると思う。


それから、これはラストシーンで考えた事だが、「この映画は、初めて二十日鼠と人間に触れる人よりも、小説を読んだ人間の方が、楽しめるのではないだろうか?」と少し思った。
この作品の一番の見せどころは、前述のジョージとレニーの掛け合いと、ラストシーンだ。この作品を一番最初に触れた時、先ず読後放心状態になり、今一つ物語の味みたいなものが感じられずに終わってしまう事がある。
ただ、一番の魅力はこの終末で、スタインベックが強く意識した悲しみというものを存分に感じることが出来るのはこのラストシーン以外に他ならない。その時に、感情や場の雰囲気を耳で、目で、感じることの出来る映画で、それらを驚愕という一感情だけにしてしまうのはあまりにも勿体ない。これは、スタインベックが生み出した文章を読み、シナリオへの理解を深めた者ほど素晴らしいと思える映画だと、私は思う。

これは私自身の経験として。
ラストシーン10分前から、涙が止まらなかった。不安を抱えるレニーとジョージ二人を眺めながら、これからどういう事が起きるのかを全て知っている私には見ているだけでもひどく辛かった。
鼻と口を抑え、嗚咽を漏らしながら最後を看取った。あまりにも救われない終末を目にし、肩を震わせ、顔を塩辛い水だらけにした時「本当の感動ってのはつまり、こういう事なのだ」と思った。


この作品は一度見て、一度読んで終わりにしてしまうにはあまりにも勿体ない作品だ。個人的には、小説を読んだ上で映画を見てほしいかな、と思う。