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ポール・ギャリコ「雪のひとひら」

ポール・ギャリコ「雪のひとひら

ある女性の一生を雪の粒に喩え、生から死へ、発生から消滅への道程を展開していく中編小説。

非常に童話的な、柔和な文体で描かれており、実際童話のそれと同様に、小さな白黒の挿絵が数ページごとに載せられている。
読んでみての一番の感想もやはりその点で、この作品の魅力は、生から死までの一連の流れ、物語を非常に分かり易く想起しやすい簡単な言葉を用いているという事だろうと思う。「雪のひとひら」と名付けられた一粒の雪というきわめて抽象的な物質を擬人化し、人そのものというふうに見立てる……という非常に変わった物語の展開方法なのだが、文章は非常に読みやすく、前述の通り童話として子供に読み聞かせることが出来るくらいにこぎれいに、小さくまとまっている。

読み終わっての感想としては、読み終わってもう一度ひととおりの物語を頭の中で反芻し、もっと味わいたくなるような、そんな作品だった。
ギャリコがちりばめた数多くの比喩表現を更に自らの手で読み取り解釈し、あらためて「雪のひとひら」から一人の女性の物語として、再構築したい欲求に駆られる。雪のひとひらに起こった事件や事柄が、われわれ人間の、女にとってどういうものにあたるのか、物語の終末として迎えられた雪のひとひらの更なる展開について、雪のひとひらと雨のしずく、そしてそれらから生まれた新たな存在といった、ギャリコにより提示された抽象表現を、各々の読者が自己解釈し、それらの事物について完結することで、真に、雪のひとひらの、ある女性の一生が完成されるのではないだろうか…、なんてことを読後にぼんやりと考えてしまった。

全部で百五十頁ほどある、と聞くと比較的長いようにも感じられるが、実際のところは挿絵を入れる分の空白により一行におさめられる文字が通常の文庫(新潮)よりかなり少ないため、頁毎の文章量と言うのは少なく、実際には百頁前後と言った程度の内容。内容も上述の通り非常にやさしい文体で読みやすい。
各段落ごとに大きく空白が空けてあり、区切りもよく、少しずつ読み進める分にもちょうどよい。また暇があればちまちまとでも再読していきたいところ。