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読書記録. 大槻ケンヂ「グミ・チョコレート・パイン」

大槻ケンヂグミ・チョコレート・パイン

大橋賢三は高校二年生。学校にも家庭にも打ち解けられず、猛烈な自慰行為とマニアックな映画やロックの世界にひたる、さえない毎日を送っている。ある日賢三は、親友のカワボン、タクオ、山之上らと「オレたちは何かができるはずだ」と、周囲のものたちを見返すためにロックバンドの結成を決意するが…。あふれる性欲と、とめどないコンプレックスと、そして純愛のあいだで揺れる“愛と青春の旅立ち”。大槻ケンヂが熱く挑む自伝的大河小説。


サブカルチャーに多大なる影響を与えた有名ロックバンドのボーカリスト大槻ケンヂの代表作「グミ・チョコレート・パイン」三部作の感想を書かせて頂こうかと思います。上記のあらすじは第一部・グミ編のものですが、感想は全三部作を通して書かせて頂こうと思います。


冴えない高校生活を送りながらも、「俺は周りの奴とは違う」という意思を持ち読書、映画鑑賞に耽る高校生・賢三はある日映画館で、それまで「つまらない人たち」だと考えていた同級生の山口美甘子と出会い、その思慮深さと博識さ、自分と同じ「周りの奴らとは違う」という考え方に惹かれるとともに、激しい羨望と嫉妬心に駆られる。美しい容姿を持ち、やがて芸能界へと旅立ち華々しく活躍する山口美甘子に対抗心を燃やした賢三は、友人たち・タクオ、カワボン、山之上と共にロックバンドを結成する…という話です。

先ずこの小説を読んでいて目立つのは、やはりキャラクターの濃さでしょうか。変態性癖を持つ少年、毎日友人と共に猥雑な会話に耽る女子高生、根暗な様相の裏で驚くべき秘密を隠し持った少女、宗教勧誘によって宗教に嵌る生意気小僧、世界各国を旅してまわったハチャメチャな老人…と、メインキャラクターからサブキャラクターまで細かく設定づけられており、キャラクターの出来以上に、作者からの愛を感じます。
また、全ての登場人物がそれぞれの道を歩んでいき、どの登場人物もハッピーエンドチックな結末・展開を迎えます。それぞれ個性的なだけに、三部全部読み終わる内に特別な愛着を持った登場人物の一人くらい生まれているであろう読者は、この結末にはさぞ嬉しく思ったことでしょう。

次に目立つのは主人公とその友人たちの独特な会話風景と、彼らによって結成されたロックバンドの顛末でしょうか。
二部作目の丁度折り返し地点から、ロックバンドは微妙に方向性を違えながら進んでいきます。本来の高校青春物語チックなサクセスストーリーではなく、学生時代にありがちな焦燥と挫折を含みながら展開していく部分こそが、この「グミ・チョコレート・パイン」の最大の魅力なのではないかと思います。一方で、パイン編から登場する不良臭いあるもう一人の青年が、実に創作的な展開でもってこのロックバンドとかかわりを持っていくのももう一つの魅力なのでもあるのですけどね。

一個人の感想としては、十分に楽しめた作品です。自分が普段読む本とは大分内容の違う本ではありましたが、古本屋で一冊三百円で買った本としては、新しく買ってもう一度読み直したい、と思わしめる作品でした。
ただ、高校を中退し早々に学生を辞めてしまった自分は、すこし物語に対しての愛着が薄かったみたいです。学生時代に読んでおきたい本などによく挙げられている通り、学生時代に読むのと学生時代を終えてから読むのでは、大分感情移入の仕方が違うみたいです。
それから、この本は面白いけれども、女性には勧められない作品だな…とは思いましたね。主人公やその同級生たちの会話はあまりにも下品で、文学や、少女小説に熱中したような人にはややショッキングでもあるかと思います。現に自分も、この猥談の嵐は衝撃的でした。


平和ながらも退屈で、刺激的な展開を求める冴えない根暗な高校生や、サブカルチャーに熱中する大学生にでも読んでもらいたい作品です。