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読書記録. サン=テグジュペリ「夜間飛行」

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「夜間飛行」

第二次大戦末期、地中海上空を偵察飛行中についに消息を絶ったサン=テグジュペリ。不時着を繰り返しながらも飛びつづけた彼は、『星の王子さま』『人間の土地』など、飛行士たちの物語を、優れた文学作品として書きのこした。『夜間飛行』は、郵便飛行事業がまだ危険視されていた時代に、事業の死活を賭けて夜間飛行に従事する人々の、人間の尊厳と高邁な勇気に満ちた行動を描く。


サン=テグジュペリで最も有名な作品といえば「星の王子さま
言わずと知れた砂漠に不時着した少年と、遠いちいさな星からやってきた王子さまの優しいお話――
一方で、この「夜間飛行」は、冒険的で先の見えない極めて危険な夜間飛行を職として、丸裸の命を空に曝しながら生きる飛行士たちを描いており、「飛行機」という共通点を持ちながら星の王子さまとは対照的な物語です。

星の王子さま」という、一つの童話で見ることは不可能な、サン=テグジュペリの本来の考え方や生き様というものを、この一冊で垣間見ることが出来たのではないかと思います。

この物語の主人公、夜間飛行機の空港支配人リヴィエールは、自らが部下に辛くあたることによって部下の士気を高め、飛行隊員の規律を保つことが出来ると考え、些細な事につけて部下を叱責し、厳しく処罰する。また、部下同士で深い関係を持つことを禁じ、互いに距離感を持ち合うことを強制させる。
そうして操縦士たちをまとめあげる一方で、自分自身も部下の命を預かるということの責任の重さに苦しみを隠しながら働いていた。
そんな中、悪天候が予想される空を夜間飛行に発った操縦士ファビアンに、ある問題が発生する…

彼は飛行活動に情熱を捧げる一方で、その未知の世界に対する恐怖をどのように克服するか…を当時三十ほどであった若いサン=テグジュペリが考えつづけた結果が、この物語に現されているのだと思います。彼もまたリヴィエールと同じように、飛行する事のリスクの重さに悩んでいた――また、未だ知れぬ謎の存在に強く惹かれていた――

この「夜間飛行」では、夜間飛行の将来を決定づける悪い事件が起こるのですが、その結果に反し、主人公リヴィエールがこの問題に対して挑戦的な態度を取ることによって物語が終わります。
このリヴィエールの態度、行動が、著者サン=テグジュペリの一つの決心の表れだったのだと考えています。現にサン=テグジュペリは、物語で起こった事件の結果に抗うように、一生を飛行活動に費やし、空で撃墜され飛行機と共に消息を絶ちます。
これが、自身を夜間飛行支配人・リヴィエールに置き換え、夜間飛行の恐怖を乗り越えたサン=テグジュペリ自身の本質的な終末。彼が描いたこの「夜間飛行」という物語は、彼自身によって作られた一つの伝記とも言える作品だったのだと、そう感じました。


題"夜間飛行"新潮社堀口大學訳:四十三頁より引用