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2017/03/17-(2) 平均律で祝えば

それなりの距離を歩き回ったせいか、ふだんなら三駅もあれば文庫本を広げるはずなのに、この日は吊革につかまったきり、ずっとぼんやりとしていた。電車の中はまだ定時前ということもあって、座席は帰宅中の学生なんかで埋まっているにせよ、それほど混み合…

2017/03/17-(1) 三人が三人ながら

その日、何時に家を出たのかは覚えていない。正午を過ぎてからなのは間違いないけれど、それが12時を回ってほどなくなのか、それよりももっと後だったのかは定かではない。 その日出掛けたのは、ときどきに行っている中古CDチェーンで全店舗一斉に決算セール…

2017/03/08-(2) スパゲティーの残りを食べた

劇場を出たのは19時頃だった。 観終わったのは18時半で、それから近く劇場で公開される映画のチラシを何枚か貰ったり、パンフレットを買ったりした。パンフレットを買ったのは私ではなく弟で、どうやらだいぶ気に入ったらしかった。私も以前には熱心にアニメ…

2017/03/08-(1) 落ちてた謀反を拾ったまで

弟と映画を観に行った。観に行ったのは『虐殺器官』というアニメ映画で、私は一年半ほど前に伊藤計劃の原作を読んでいた。私が読み終えてから半年ほどして伊藤計劃の作品がアニメになるという知らせがあり、弟に原作本を貸してみると興味を持ったらしく、結…

2017/02/09 天気さえ許せば

その日は12時前後に目覚めた。前日に床に就いたのは1時前後といったところだったから、いつもよりもかなり長く眠ったことになる。 普段のようにトイレに行こうとすばやく身体を持ち上げ、背筋を伸ばそうとしたところで、腰に激しい痛みを覚えた。その痛みは…

2017/01/27-(2) 自分の叫声を聞き

フィルムセンターを出たあたりから足の指が痛み始めていた。痛みは、4,5日ほど前にできた霜焼けのためだった。 足の指に異常を覚えるようになったのは今年に、2017年になって間もない頃で、その時点ではまだ痛みではなく痺れで、座ったり横になっているとき…

2017/01/27-(1) なんのためにそんな手間を

ひと月ほどの間国立近代美術館の分館のフィルムセンターにて開催されていた戦後東ドイツの映画ポスターの小規模展示*1を観に行ってきた。その日家を出たのは13時過ぎで、その前に、近く必要になるはずのものなどを買い漁っていると、電車に乗る頃にはすでに1…

2016/12/24 すべてがあの古いロッジで

その日起きたのはたしか9時、10時といったところで、土曜日の起床時間としては少し早かった。暖房の効いていない部屋はとても寒くて、毛布に包まれていない顔――とくに鼻先は外から帰ってきたときのように冷えきっていた。 数十分ほど毛布にくるまったまま、…

2016/12/21-(2) 「切符がない」と私は言った。

**「あなたは……」と、まず老夫婦の男性の方が隣のメタルフレームの眼鏡を掛けた男性に声をかけた。「もう永く、ここに通っていらっしゃるんですか」 相手の男性は少しびっくりしたようで、ややうわずった声で「ああ、私ですか」と言い、それから少し間を置…

2016/12/21-(1) 歌うように指示を出す

この1年のことでいろいろ考えたことについて、なにかひとつ、文章にまとめあげようと思ったのだけれど、どうにも書ききることは叶わないようなので、それとは別のことをひとつ。たわいもないことを書こうと思う。 今日起きたのは、8時から5分、10分を過ぎた…

2016/10/12-(2) いつかの警官の言いぐさ

展示室の中にいたのは一時間ほどで、展示数を考えるとなかなか長い時間だった。展示室を出た後は、案内カウンター近くにあるチラシを眺めて、いくつか気になったのを抜き出して丁寧に持ってきたファイルの中にしまった。外に出る前にすこしの間だけ館内のベ…

2016/08/14-(2) もう一人の女神よりも遥かに年少で

** 半分を過ぎたところで、展覧会の目玉の『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』が展示されていた。その前後でも『ぶらんこ』や『ガブリエルとジャン』、『都会のダンス』『田舎のダンス』両作などが展示されていて、とくにこの辺りでは立ち止まってじっくり観…

2016/08/14-(1) 最近の号に載ったお前の詩を読みに

8月の半ばに、ピエール・オーギュスト・ルノワールの特集展示のために、乃木坂に行った。 美術展の類に行くのはもう大分久しぶりで、最後に行ったのは国立西洋美術館で、まだその時は世界遺産に認定される前だった。今から2年前の2014年の夏頃、フランシスコ…

2016/08/24 ぼくは心から、相槌を打った。

ふた月ほど前に買った相対性理論の『シンクロニシティーン』を、熱心にとまではいかないにしても、ときどきに通して聴き返していた。 先の日記に書いたようにこのバンドはちょうど私が学生をやっていた頃に盛んに活動していたグループで、私の周囲で同じよう…

2016/07/31 この本を生きたトムへ

ここのところ、うまく寝つけない日が続いていた。 近々、朝早くから家を出て、丸一日みっちり過ごさなくてはいけない用事があるからということで、今月の初めからじわじわと睡眠時間を早めるようにしていて、しばらくはそれなりにうまくやれていた。けれども…

2016/06/29 僕は東先生の内にいる間、

昨日、帰りの電車の中で「明日こそは早くに家を出るんだ」と心に誓っていたのに、結局次今日も電車に乗ったのは昼過ぎだった。メトロの24時間乗車券を使って電車賃を浮かせられたのは行きの分だけで、それも危うく期限の時刻を過ぎて、行きの分さえも払えな…

2016/06/28 彼に好意をもつまいとしたほど

久々に映画を観に渋谷に行った。 劇場で観るのは先月の上旬頃に池袋でフリッツ・ラングを4本観た以来で、今日の目当てはジョージ・キューカーの『奥様は顔が二つ』とジョゼフ・L・マンキーウィッツの『イヴの総て』だった。明日も同じ劇場で二本立てを観るつ…

2016/06/15 次の一歩のことだけを考えるんだ

旧約聖書に私の好きな話がある。十二小預言書の5番目、ヨナ書だ。 預言者ヨナはある日主にこう命じられた。 「アッシリアの首都・ニネヴェの街に行きなさい。そこでニネヴェのひとびとに説くのだ。『これまでの罪を悔いあらためなさい。さもなければニネヴェ…

2016/05/26 昔も、今のこの気持のまま

姉さんに、頼まれ事をされて久々に外に出たついでに、街をぶらついてきた。 ここのところほとんど外に出ていなかった。先週末に洗髪剤や歯ブラシ、掃除用の粘着ローラー、コーヒー豆なんかを買いに行ったついでに少しばかり駅の周辺を歩き回ったくらいで、そ…

2016/05/05 書物はひそかに

私は馬鹿なのだな、と最近になって気付いた。 「私は馬鹿だ」という言葉は今までに何度も言ったり、或いは書いたりしたけれども、これまで、私がこうした消極的な言葉を使うときのほとんどは、過大な自尊心を誇示するためであったり、或いは「いや、そんなこ…

2016/04/26 なにかしらの幸福な体験

先週の中頃からずっと、今やらなくてはいけないいちばん大事な課題とは別に、お金のことを考えていた。 その月々に必要なパンや牛乳やコーヒー豆や、生理用品だとかの必需品を買う分にはとくべつ困ることはなかった。ただ、そういったものとは別に、少なくと…

2016/04/20 鋭い欲情のうずきをもたらした

この一ヶ月ほどの間に、これまで長いこと使ってきた、あるいは身近にあった色々なものが失くなってしまった。16歳の時のクリスマスに両親に買ってもらった黒いハンチング帽、同級生たちとはぐれてしまうひと月前に買った合成皮革でできた黒いバッグ、中学生…

2016/04/04 人間がまだ言葉を信じているとは

先日、近所のスーパーマーケットに行った。切らしていた食パンと牛乳と徳用のウインナーソーセージを買ってレジに並ぶと、新人らしい女の子がレジをやっていた。まだ20歳にもならないだろうというくらいのぽってりした顔で、化粧っ気も薄くとても可愛らしい…

2016/01/11 3. 必ずしも敗北者ではなく

ラグビー部仲間での会話が一段落すると、銘々が別の席に移って他の子たちと喋り始めた。最初のうちは席を移ったところで話し相手もいないのだからと適当にテーブルに残っている人らの話を横で聞かせてもらっていたけれども、向こうとしても居心地が悪いらし…

2016/02/12 味もそっけもない言いかた

用事を済ませにすこし遠くへ出掛けた際、女の子と少しだけ話をした。 たまたま同じ要件でそこに来たという点を除いては、その女の子と私の間にとくに共通点はなく――というよりは、共通点があるのかないのかさえ判らなかった。その子がなんていう名前で、何歳…

2016/01/11 2. わたしはいわば物陰に

こうした場所に来て同窓生たちとまともに顔を合わせるのはほんとうに卒業式以来だから、皆物珍しげに私を見ていた。それに、唯一の知り合いが来ていないことも察して、だいぶ気を遣ってくれた。席が足らなくなったからと座布団やらをビールのカップやらを回…

2016/01/11 1.盲従の生涯の終わりぎわに

この日、中学三年の時の同窓生との集まりがあった。同窓での集まりと言ってもこうした集まりは今年だけのものではなくて、17,18くらいの時から毎年定期的に行われていて、取りたてて特別な催しだったというわけでもなかった。ただ、既に何度も行われているこ…

2015/12/18 2. 禁じられた事柄によくあるように

駅ビル内にある喫茶チェーンを見つけてテーブルを確保した後、荷物を見るためにひとりずつコーヒーと食べ物を頼みに行った。先ずイトウさんから、それから私が。出来合いのサンドイッチとドリップコーヒーを頼んでコーヒーを待っていると、機械の故障ですぐ…

2015/12/18 1. ふたつのかんぬきを留め金にはめ、

ひと月と一週間ぶりくらいにイトウさんと会った。一番の目的は11月に貸してもらった筒井康隆のハードボイルドものの長編小説とジャズのCDを返すことで、その他にも、先月のフーターズのお礼に品川のアンナ・ミラーズに付き合ってもいい、と言ってくれていた…

2015/12/21-2 事態は思ったほどひどくはない

焙煎屋から喫茶店に向かうまでの間は、音楽プレイヤーでビートルズを聴いていた。詳しいことは思い出せないけれど、スクランブル交差点で信号が変わるのを待っている間に「アイル・フォロー・ザ・サン」なんかを聴いていたと思う。今思えば、なんでこの時ビ…

2015/12/21-1 内部から汚れがやってくるんだよ

昨日、布団に入ったのは確か2時くらいだったと思う。予定よりは遅くなったけれど、それでも朝に近くなるほどは起きていなかった。布団から出たのは14時近くなってからだった。深い眠りに入れないまま1,2時間おきに目を覚ましてはまた寝る、ということを繰り…

2015/12/20 疲れきってしまわないようにすること

私は18歳の誕生日を迎えた時から、私の人生はもうどうにもならないのだ、ということをはっきりと自覚していた。 それは、くじで7億円を当てたとか、とびきり綺麗ですてきな女の子と交際できることになったとか、金持ちの家の召使として好待遇で雇ってもらえ…

2015/11/24 まったく不可思議なほどに彼によく似た

昨夜、横になったのは5時過ぎで、はっきりと眼が冷めたのは午後に入ってから1時間ほど経った頃だった。 この数日の間天気が悪く、ずっと曇りか雨の日が続いていたけれども、この日はよく晴れていた。布団にくるまったまま窓の方を見ると、本当に眩しくて、胸…

2015/11/10 ビールを飲みながらうんうんと相槌をうっていた

良い映画を観た後はだいたい、この映画について語り合いたいと思うものですが、イトウさんとはいつも18時過ぎ頃には別れる約束をしていたので、後ろ髪を引かれつつも駅の改札口まで送ると伝えると、意外にも彼女の方からお誘いを受けました。それも、その辺…

つかさという喫茶店のこと

先日、「つかさ」という喫茶店が閉店しました。 JR高田馬場駅のある大通りを西側に5分ほど歩いたところにある3階建てのビルの1階にある喫茶店で、かつては手塚治虫の製作スタジオが同じビルの2階にあったらしく、連日スタジオの製作者たちや手塚氏が利用して…

2015/08/12 それが例の?

ここのところ多忙で前回から少し期間が空いてしまったので、今日は久々に日記らしい体で少し書いてみましょうか。 8月のはじめに大事な試験があって、その勉強のためにだいぶ忙しく、ろくに出掛けたりする余裕もないくらいでした。どれくらいが切羽詰まって…

2015/07/15 たまらなく焦る、

今月に入ってからは、外出に割く時間がかなり減ってしまったこともあって出掛ける先はだいたい映画館で行くのはぎりぎりの時間。見終わってものんびりする余裕もないままちょっとだけぶらついて帰る、というような状態だったのですが、今日は午後から丸々時…

2015/07/07 すごくロマンティックだわ、

先月の末に三本立てを観て来たばかりなのですが、一週空けて、また早稲田松竹へ二本立てを観に行ってきました。 今日のお目当ては「インヒアレントヴァイス」「トゥルー・ロマンス」の二本で、これは以前から観たいと思っていたものの、見逃してしまった二本…

2015/06/23 しだいに色濃くなる霧の中

久々に映画を観に行ってきました。電車に乗っての外出も久々で、友人と会って話した日以外散歩や書店に行くときくらいしかろくに外に出ていませんでしたから。 10時過ぎに家を出て、電車に乗り低血圧でぼんやりとした気分のまま先ず渋谷のイメージフォーラム…

2015/06/10 おれはもうドルーグなんてものには頼らないぞ

一月半ぶりくらいに、小中校時代の友人に会ってきました。 お互い今年度から大きく生活が変わって、時間を合わせるにも以前より時間の余裕がなくなっていたので、割り切って平日の夕方に駅の改札口で待ち合わせて、喫茶店でのんびり話でもしようじゃないか、…

2015/05/27 ニューヨークで一番の道楽ものでね

2015/05/27 渋谷に出掛けてきました。私が渋谷に行く、というと大体は映画か喫茶店が目当てなのですが、今日は人に会うために。 Iさんとの待ち合わせは11時にハチ公前広場で。1時間あれば十分だろう、と思い10時に家を出たのですが、とくに電車の待ち時間や…

2015/04/28 耐えがたい状況に置かれて、

先日の日記の続きを書こうかと思ったのですが、なんだか学級日誌の「一日を振り返って」の項目みたいな行動記録になってしまったので、途中で書くのをやめにしてしまいました。 ここのところ「日記を書こう」という意識が強すぎて、やたら長ったらしい文章に…

2015/04/28 一人でも大人になること

昨日、映画を観に行ってきました。 先週の初め頃に体調を崩してから外に出ることもほとんどなかったので、映画を観に行くのも久々で、最後に行ったのは3週前の4月15日「小さな恋のメロディ」のリバイバル上映で、東京の映画館となるともっと前。4月7日、早稲…

2015/04/08 誇らしげなため息に変わって

今日は、雪でしたね。4月に雪が降るのは、だいぶめずらしいのではないかと思います。昨年も大分寒い冬で、2月に驚くほどの雪が降って、連日のように電車の遅延やらバスの運行休止やらで家族が慌ただしくしていたのを覚えていますが、それでも確か、4月に雪が…

2015/03/31 あの人との約束の当日は

春になりました。また、季節が一つ巡ったんですね。 すごくあっという間に巡ってしまったような気もしますが、案外ゆっくりと、噛み締めるように時間を重ねていたような、そんな感じもします。これまではこの季節になるといつも時間の経過を嘆いてばかりいま…

2015/02/13 優雅さと無造作な仕草

先週の金曜日に、映画を観に渋谷へ行って来ました。目当てはイメージフォーラムという映画館で上映されているマヤ・デレンの短編作品集で、2/13まで公開していました。ただ、映画のことはまた後日にして、今日は渋谷散策だとか、喫茶店のことなどを書いて見…

2015/01/05-07 のこされた四冊の本

今週の月曜日、1月5日に、右下の親知らずの抜歯をして来ました。 手術をしたのは東京の大学病院の口腔外科で、自宅から電車を利用して大体40分から50分ほどのところにあります。治療予定の親知らずは二本あり、真っ直ぐ生えたものの歯茎に埋まっており、痛み…

2014/12/31 日々はとてもつらくて、はやく大人になりたくて、……

また一年が終わって、ひとつ歳をとりました。 今年はいったいどんなものを経験し、何を得たのかな、と考えます。頭のなかに詰め込まれた150冊の本に、150本の映画。5回のプラネタリウム、レトロゲーム。メモリーカードの中に詰まった数百枚の写真。コーヒー…

2014/12/10 ある人をめぐる冒険

ーー月日は余裕然として私の眼前にどっしりと横たわり、自分を見つめていることを私はよく知っていて、それを理解した上で、ある種の諦めのような、或いは希望のような、些細な反抗を起こし続けています。 不意に外に出たくなって、だらしくなく外に垂れたワ…

2014/12/04 やっぱり、命ってあっけない

九月半ば頃に買ったコーヒー豆をようやく飲み切りました。飲んでいたのはマンデリンというインドネシアのコーヒーで苦味の強い品種で、少し多めに豆を挽いて、ペーパードリップで濃い目に抽出して、ブラックで飲んでいました。ブラックとは言っても、渡しの…